浦和の家


浦和の家 ツーバイフォー住宅のリフォーム
リフォーム / 住宅
木造 / 2階建て / さいたま市 浦和区 / 2016 / 施工:鏑木工務店


< 浦和の家 - さいたま市浦和区K邸のリフォームの記録 >

ツーバイフォーメーカーハウスの内部をリフォームしました。若いご夫婦と元気な四人のこどもたちのすまいです。
私たちのホームページの<問い合わせ>からご連絡をいただきました。
築10年ほどの比較的新しい住宅を購入され、それをリフォームしたいとのことでした。元々この家には仕事を引退した老夫婦がお二人で住んでいらしたとか。家族構成はもちろん、必要とする部屋も異なります。すまい方もまったく正反対。というわけで、リフォームにあたっては、内部空間の捉え方・つながり方を組み立て直すことが必要になりました。それを担ったのが、吹抜けとその下のキッチンを中心として展開する、木製の壁や棚や手すりなどです。それらをお互いに呼応し合うひとつづきのものとして扱い、この住宅の空間を、そしてここでの暮らしを再構成する重要な家具群として設計しました。
建主ご夫婦と私たちは、連歌のようにやりとりを重ねながら、少しずつ計画を進めていきました。そして最後には思いもよらなかった空間の構成へと至り、先日無事竣工しました。壁の色やタイルの色、照明器具の選定などについては、私たちもサポートしましたが最終的な判断はご夫婦でされています。
建主ご夫婦とそのご家族の人柄があらわれた、生き生きとした表情を持つ、魅力的なすまいが、生まれました。


< 吹抜けとキッチン >


玄関から室内を見たところです。

室内に入ると、その正面は羽目板の腰壁になっています。
また壁には街灯のようなあかりがつき、家族みんなを迎え入れ、そして見送ります。

上を見上げると吹抜け、高窓から明るい光がおりてきます。その光の下がキッチンです。


キッチンに隣り合って一方はダイニング、もう一方はスタディーコーナーと続きます。吹抜けの先、2階にリビングがあります。吹抜けを介して、1階と2階がつながり、キッチンを介して家族の暮らしがつながります。


< 計画の経緯 >


最初に既存建物の簡単な平面図だけをいただき、ファーストイメージを描きました。
構造的・法規的な制約はとりあえず置いておいて、まずは建主さんご夫婦のお話を聞き、それをスケッチにしました。

1階全体がゆるやかにつながっていく空間です。
ダイニングの先にリビングがあるという一般的なレイアウトですが、L型キッチンの隣にワークテーブルを設け、それとダイニングテーブルがつながります。このワークテーブルというアイデアが、後にスタディーコーナーというアイデアに生かされることになります。
土間を作りたいというお話もあったので、玄関の壁を一部取り払って、元々あった中庭を土間に作り変えるというアイデアを試しています。後日この壁を取り払うことが構造的に難しいということがわかりましたので、土間案はなくなりましたが、それはオーニングがかけられた広々としたウッドデッキのテラスというアイデアとして実現しました。
その後、既存建物の詳細な図面を入手し、構造的・法規的制約を加味しながら幾つかの案を検討していきました。A案、B案、C案と系統ごとに分類しながら、例えば2階にキッチンがあるとどうなるか、などについても検討しました。

以下はC案系統の3つの案です。

キッチンの位置と向きを既存のままとした案。
スタディーコーナーをダインイングの先に設けています。このC案の段階では、リビングを1階に設けています。

キッチンの向きを回転して、キッチンとダイニングのつながりをより強くした案。
シンクとそれにつながる作業台が独立したアイランド型のキッチン。IHコンロは壁に向かっています。行き止まりがなく、ぐるっと回れるプランに進化しました。

キッチンを既存の位置から移動して向きを変えて配置した案。
キッチンはⅡ型。ダイニングに隣接していたスタディーコーナーをキッチンを挟んで反対側に配置し、独立させました。これによりキッチンは吹抜けの真下に配置されることになりました。家のなかでの人の動きをキッチンの配置で整える、そんな提案です。

この案までは、リビングはキッチン・ダイニング・スタディーコーナーから少し離れた位置の1階に、独立していましたが、その後、建主さんご夫婦から連絡があり、リビングを2階にします!とのこと。いまにして思えば、大きな決断であり、転換点だったと思います。
そしてこの方針が実施案につながっていきました。

吹抜けに面した2階にリビングを配置することで、吹抜けを介してキッチンとダイニング・スタディーコーナー・リビングがつながることになります。吹抜けがこの家での家族のくらしをつなげる大切な役目を担うことになりました。
また、浴室に隣接する便所と洗濯室を入れ替えて、日々大量に出るこどもたちの洗濯物に対応する、広々とした洗濯室をつくることになりました。

このようにして、幾多の変遷を経て、実施案が決まりました。 この解答は決してはじめから決まっていたものではありません。建主さんご夫婦と私たちが連歌のようにやり取りを繰り返すなかで、少しずつ案を修正し進化させ、自分たちが暮らしたいすまいとはどのようなものか、という思いをゆっくりと醸成することによって得られたものなのです。
確かに住宅の設計は構造や法規や予算などの制約を受けざるを得ません。しかしそれは、幾つかある選択肢のなかから選ぶしかない、ということを意味するわけではないと思います。

ひとつひとつ、自分たちのくらしに照らし合わせながら、理解し、学び、そしてイメージする、そのようなプロセスを経ていくこと。そのことが大切だと私たちは考えています。


< キッチンとスタディコーナー >

書棚の背後はパントリーになっています。書棚の下をくぐって入ると、左右は可動棚板で構成された収納棚になっています。そして書棚に隣接して掲示板を設けました。磁石もつく掲示板です。

キッチンはシンクとIHヒーターとを分けたⅡ型キッチンです。通路巾も十分確保しました。
若いご夫婦の四人の子育てには、双方のご両親も協力しています。そんな理由で、大人二人が一緒に作業できる、余裕のあるキッチンにしました。その正面が皆の予定を把握するための掲示板です。


< タイルと木の扉 >

キッチンの壁には模様入りのタイルを使いました。
タイル一枚ごとに少しずつ異なる表情があり、それがとても良い雰囲気を醸し出しています。

収納棚の扉と換気扇の前板にはホワイトスプルスの3層パネルを横使いで用いています。
節や木目がきれいに出ています。塗装は白いオスモカラーで仕上ました。 


< 吹抜けまわり >

吹抜けを見上げます。その向こうはリビングです。
元々あった壁を取り払って吹抜けとつなげました。キッチンからリビングの気配を感じることができます。またリビングではキッチンから上がってくる音や匂いを感じることができます。もちろん覗けば食事の準備をしている様子などが見えます。
手すりは木製、穏やかな握りの感触が生まれるように、手すりの縦桟は上が細くて下が少し太くなっています。

リビングの反対側は腰壁になっており、その向こうは既存の書棚です。
書棚はL型に二方向あったのですが、一方は撤去し手すりに変え、もう一方を残し、その上に手すりを取り付けました。また書棚には引戸も設けました。 


< 洗面室について >

洗面室もリフォームしています。
2ボウルの人造大理石洗面カウンターの下には、長い棚を設けました。カウンターの上には、大きな鏡を家具屋さんで見つけて取り付けています。緑色のモザイクタイルと天井の薄水色が呼応しています。

洗面ボウルにはたっぷりとした容量を持つものを選びました。今後こどもたちが成長していく過程できっと役に立つと思います。

背後の壁にはフック付の横長の棚を製作して取り付けました。
傍らに置かれたワゴンももうまく納まっているようです。フックの向こうにタオル掛を取り付けることもできます。


2ボウルの洗面カウンターのある洗面室は、建主ご夫婦が是非とも実現させたかったものでもありました。
私たちは、このようなスケッチを描きながら建主さんと一緒に空間のイメージや機器の選定などを進めていきました。


< ウッドデッキとオーニング >

広々としたウッドデッキのテラスを新しくつくりました。
元々縁側のようなデッキはありましたがそれを撤去してウッドデッキをつくり、また日よけ・雨よけとして伸縮式のオーニングをとりつけました。

毎日の洗濯物を干す場所ではありますが、お茶を楽しんだり、夜風に吹かれて一杯、といった楽しみを提供してくれる場所にもきっとなることでしょう。

仕上にはオスモカラーの外部用を用いて白く仕上げました。東に向いているウッドデッキなので、午前中の爽やかな光がここで反射して室内に入り込んでくる、そんなことも意図しています。 


< 雰囲気 >

2階へ上がる階段の前からキッチン方向をみたところです。
このすまいの雰囲気がよくわかるシーンかもしれません。

1階のクロスはほぼ張り替えましたが、階段部分は既存のままです。小さな見切りをまわして、新旧の切り替えをしています。写真では写っていませんが、階段の正面がウッドデッキのテラスになっています。
爽やかなブルーグレーのカーテンがかけられ、空気の透明感が増したようにも感じます。 


< 吹抜けと2階のリビング >

2階から見た吹抜けです。
吹抜けに面した高窓から明るい日差しが室内に入ってきます。そしてその光が階下のキッチンへ降りて行きます。
手すりの縦桟は、よく見ると上が細く下がほんの少しだけ太い、そんなデザインになっています。わずかなことですが、それによって独特の味わいが生まれてきています。

2階のリビングから吹抜けと既存の室内を見たところです。
この吹抜けを介して新しい空間と元々ある空間がつながっていく様子がわかります。そしてそれは空間だけではなく、光や音、声や気分、気配といったものもつないでいくのです。

2階に設けたリビングです。
吹抜けに面した部分は元は壁でした。それを取り払い吹抜けと連続する空間となるようにしています。

室内となっている部分の一角には、元々屋根と壁に囲まれ、そこに開口が開けられたバルコニーがありました。確認申請書を調べると法規上は室内扱いとなっていましたので、壁を取り払い、開口部だった部分に窓を取り付け、全体をひとつの部屋となるようにリフォームしました。

手前の少しクリーム色の壁が既存の壁、その先の白い壁面が新たに整えたもの、奥の面だけ小豆色になっています。 


< トイレの仕上げ >

1階のトイレです。
もとは階段下の物入れだった部分に新たにトイレを設えました。手洗いの周りは青い小さなモザイクタイルで仕上ています。

トイレ部分のスケッチです。
当初の計画では、アルコーブの計画はなかったのですが、現場に入ってから建主さんの希望もあって実現しました。

2階のトイレです。
機器の配置はそのままですが、便器・手洗いを新しいものに交換し、床を張替え、壁面と天井は深い青色のクロスで仕上げました。鏡は家具屋さんで購入してきたものを取り付けています。 


< 工事中の現場 >

工事中の現場の様子です。
不要な壁などを取り払い、仕上げ工事へと進む準備をしています。

工事も順調に進み、キッチン周りの造作工事やタイルなどの工事が終わっています。後は細部を仕上て、クロスを張っていけば完成になります。

日々変わっていく現場を見ていくことは楽しいことです。私たちは設計どおりに工事がなされているかを確認すると同時に、施工する方とも話し合いながら、円滑な現場運営と質の高い工事を目指して、工事監理を行ないました。

このすまいが建主さんご家族の皆さんにとって穏やかで居心地の良い場所となり、皆さんのさまざまな思いを受け止めながら、表情豊かな家に育っていくと良いなと考えています。


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小形 徹 * 小形 祐美子 プラス プロスペクトコッテージ 一級建築士事務所
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